男優 89 George Hilton 

 1934年07月16日 ウルグアイ/モンテビデオ県モンテビデオ出身 -

 ミシン機関銃片手に政府軍をバッタバッタと斃していく。
 ところが突然動かなくなる...当たり前だ、ミシンは衣類・雑巾を縫う物であって機関銃ではない...それでも「チェッ、不良品か」と嘆く主人公。
 やがてステルヴィオ・チプリアーニの軽快なオープニング曲に乗って民衆のエネルギーが爆発する。ところが本気で戦っているのか、それとも大根役者なのか、素人丸出しの民衆たちの動きを観ていると笑いがこぼれてくる。

 このオープニングの雰囲気はそれまでのマカロニ・ウエスタン映画とは明らかに違った。
 乾いた大地に殺伐とした情景...暗躍する悪と流れる鮮血...マカロニ・ウエスタン特有の世界ではなく、どことなく楽しげで明るい争いが繰り広げられる。
 ジョージ・ヒルトンとその代表作『荒野の無頼漢』に僕は惹きこまれた。

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 ▲ 『荒野の無頼漢』より

 生まれはウルグアイですがイギリスで育ったようであります。
 最初はラジオ関係の仕事をされていたようですが、1955年になると南米アルゼンチンに移動、彼の地で映画関係の仕事(俳優?)に従事していたようです。

 Nel 1955 si trasferisce in Argentina, adotta lo pseudonimo di Jorge Hilton e comincia ad apparire in diversi fotoromanzi e in produzioni cinematografiche destinate al mercato interno del Paese.....Wikipediaより

 IMDbサイトでは1956年のアルゼンチン映画『Los Tallos Amargos』と言う作品から彼の名を記します。
 このアルゼンチン時代はJorge Hiltonの名で活動をされ、8本の映画作品に足跡を刻んでいる。僕自身はどの作品も観たことがありません。

 1963年、南米アルゼンチン出身でその地で俳優として活動されてたジョージ・リガウド(George Rigaud)やアルベルト・デ・メンドーサ(Alberto de Mendoza)らに触発されたのか、イタリアに渡ります。そして名を英語風のGeorgeに改めます(なお、ここで掲げた2人の俳優さんはマカロニ・ウエスタン映画ではお馴染みですね)。
 この時代のイタリア映画って40年代、50年代の勢いそのままに元気があり、世界にも自国の芸術文化の隆盛を誇っていたと思われます。そうしたイタリア映画やその代表格とも言えるローマのチネチッタに対する憧れや想いを、当時の若い俳優さんは抱いていたんでしょうね。

 そのイタリアでの最初の作品は1964年のイタリア映画『L'uomo Mascherato Contro I Pirati』。
 僕は観たことがありませんが、当時イタリアで流行ったアドヴェンチャー系の作品でG.ヒルトンは主演を務めているようです。いきなりの主演と言うことはアルゼンチン時代の俳優生活で、その名がイタリアまで伝わっていたのでしょうか。
 
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 ▲ 『L'uomo Mascherato Contro I Pirati』Poster (ネット上から)

 この作品の翌年には、イタリアの喜劇コンビFranco&Ciccio主演の『Due Mafiosi Contro Goldginger』に出演、ここでも重要な役どころを演じている。

 1965年、マカロニ・ウエスタン出演の第1作目『真昼の用心棒』で主人公フランコ・ネロの兄役を演じます。
 最初は単なる酔っ払いの冴えない兄貴かと思うも、ひとたび銃を握れば「へい、旦那」の掛け声とともにあっという間に敵をやっつける凄腕の持ち主だったりもする。
 何はともあれ、この作品以降マカロニ・ウエスタン映画を代表する俳優の一人として活躍が続く。

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 ▲ 『真昼の用心棒』より

 ところが僕の中ではG.ジェンマやC.イーストウッド、L.V.クリーフ、A.ステファンらと違って少年時代の想い出が残されるかと言うと、正直なところありません。それはそのままテレビ放映の頻度やレコードと結びつくんです。G.ヒルトンの出演作品でTV放映がされた際に見た記憶は『真昼の用心棒』だけかな...またオムニバス盤LPやEPでも同じことが言えます(僕が持つレコードの話しです。CD化時代になって『黄金の三悪人』とかは収録される)。

 マカロニ西部劇のDVD化と共に彼の出演作品を観る機会が増え、『荒野の無頼漢』や『黄金無頼』の国内版DVD、さらに輸入版DVDと幅が広がり、僕の中で大好きな俳優さんへと変化していったのが真実です。

 それと“ジャンゴ”には及びませんが名物キャラを演じてきたのも特徴の一つではないでしょうか。

 メキシコ革命の動乱、宝石の争奪戦に暗躍するアレルヤ。
 コメディ度を前面に打ち出しながら金塊の争奪戦を描くトレセッタ。
 ジャンニ・ガルコの築いたキャラを引き継いだサルタナ。

 何れもジュリアーノ・カルニメーオ(Giuliano Carnimeo) 監督との息の合ったコンビで作られた作品で、奇想天外な演出で観る者を楽しませてくれた。
 アレルヤが2本、トレセッタが2本、ヒルトン版サルタナが1本...撮る側が同じ人物で、演じる側も同じ人物なら“キャラクター”を分散することなく、一つの“キャラクター”で統一していたなら、もう少し広がりを見せたのではないかなと言う思いは個人的にはあります。
 (KitoschはG.カルニメーオ監督ではないので省略)

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 ▲ 左から(原題はタイトルが長すぎっ)、
 C'e Sartana...Vendi La Pistola E Comprati La Bara
 Testa T'ammazzo, Croce...Sei Morto...Mi Chiamano Alleluja
 Lo Chiamavano Tresette...Giocava Sempre Col Morto

 ジョージ・ヒルトンはマカロニ・ウエスタン暗黒の時代とも言える70年代後半まで頑張ってくれました。

 さてIMDbサイトでは2009年までに74本の映画/TV作品に足跡を刻み続けておりますが、当然マカロニ・ウエスタン以外の作品にも数多く出演されております。
 ここで毎度お馴染みの段ボール箱の捜索です。

 ジョージ・ヒルトンの映像媒体ですが、残念ながら日本国内でのリリース作品は多くありません。
 この後の音盤で見る出演作品でも述べますが、70年代初期のジャッロ物なんかがゴロリと抜けておりまして、イタリア映画FANには悲しい思いがいたします。

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 写真左から、
 『デボラの甘い肉体』DVD (Il Dolce Corpo Di Deborah 1968・伊)
 『栄光の戦場』Video (Il Dito Nella Piaga 1969・伊/米)
 『バンパイア/最後の晩餐』Video (A Cena Col Vampiro 1987・伊)

 『デボラの甘い肉体』はキャロル・ベイカー主演のサスペンス物。この作品の大ヒットで<ジャッロー映画>と呼ばれるイタリア産エロチックホラーが次々と製作されたと言われ、その礎となった作品だ。主演女優、そして官能的な邦題からエロ度も期待されようが、ベースはサスペンス作品なので“その”期待は禁物です。G.ヒルトンは主演コンビの別荘地の隣人に住む役どころで彼の活躍(ちょっと変な奴ですが)で完全犯罪が崩れます。僕的にはE.スチュワート、L.ピスティリも重要な役で出演されるなどの理由もあって楽しめた一品です。
 『栄光の戦場』はドイツ軍の攻撃で生き残ったのは銃殺刑の囚人兵士2人とその刑を監視する新人少尉のわずか3人。その3名でドイツ軍が制圧目標に掲げる村を守り抜くと言うお話しです。G.ヒルマンが演じるのは新人少尉の役ですが、怪優クラウス・キンスキー相手では分が悪いのか平凡な軍人にしか見えんです。
 次は一気に80年代終わりまで飛んで『バンパイア/最後の晩餐』です。
 この作品は映画ではなく『Brivido Giallo』と言うTVシリーズの一本なのでしょうか。“Season1のEpisode4”と言った記述があります。何故か、日本国内ではDVDの映像媒体もリリースがされておりますが、僕が持つのはVideoであります。ホラー映画の巨匠の正体は吸血鬼。オーディションで合格した4人の若者を居城に招き、斃すか斃されるかの戦いが始まると言う内容だ。幾分、ユニークな演出もあってホラー度は少ない。G.ヒルマンが主演の吸血鬼を演じる。肩肘張らずに気軽に観るには良いかも...。

 映像の次は...音楽=円盤ですね。
 下に掲げた円盤の作品はジョージ・ヒルトンが主演、若しくは主役級の役どころで出演です(と言いながらも『美女連続殺人魔』を除く2作品は未見)。

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 写真左から、
 『La Coda Dello Scorpione』CD (1971・伊/西)
 『Tutti I Colori Del Buio』CD (1972・伊/西)
 『美女連続殺人魔』CD (Perché Quelle Strane Gocce Di Sangue Sul Corpo Di Jennifer? 1972・伊)
 
 選択した3枚ともジャッロー物(過度の流血をフィーチャーした引き伸ばされた殺人シーンを特徴とし、スタイリッシュなカメラワークと異常な音楽のアレンジをともなう。ま、定義などないので曖昧ですが)、しかもスコアは3枚とも巨匠ブルーノ・ニコライと言う結果になってしまった。
 素晴らしい♪
 イタリア映画のこの手の作品は例外なく音楽が素敵なんだよね~♪
 ニコライ先生が書き上げた曲ですよ、文句など言えますかっ! 問題は日本と言う国において映像媒体のリリースがないと言う不可解な事実なんですよ。ニコライ先生が発信するメロディに乗って、ジョージ・ヒルトンが活躍する(?)姿が見られない悲しさは許せません。

 ジョージ・ヒルトンのマカロニ・ウエスタン映画を下にリストアップしてみました。
 21作品中、未見は4作品です。
 結構、マカロニ・コメディ西部劇への出演と言うイメージもありまして、特に70年代の作品にその傾向が顕著に表れます。もっとも、この時代のマカロニ・ウエスタンはコメディ・タイプの作品が多かったですからね。『真昼の用心棒』での役どころも酔っ払いのお兄様ですから多少は似たようなもんか。いやいや、お酒に逃げるのはそれなりの理由があったからだよ。ただの酔っ払いと一緒にするなっ!
 日本でも劇場公開された代表作『荒野の無頼漢』がその理由でしょうか。
 シリアス路線は『この盗賊どもからは、埃と死の匂いが立ちのぼる』。
 この作品は未公開ながらも傑作の一本と言えます。精悍ながらも悲壮に満ちた男と言う役どころを演じておりまして、守るべきものを無くした男たちが滅びの道へと進む姿が何とも寂しく映し出されます。間違ってもアレルヤやトレセッタの後に観てはいけません。
 個人的には『サルタナがやって来た...貴様の拳銃と棺桶を交換だ』が一番好きなんですよね。映画のオープニングで水筒を宙に放り投げ、それを銃で撃ってダイナマイトの導火線の火を消す。そして、満足したのか微かにニコッと笑う。そこに被るフランチェスコ・デ・マージの音楽が素晴らしいことこの上なし。さらに、序盤で盗賊の手下どもを片付け、軟禁状態にあった母子を救い出し町から逃がしてあげる優しさ。ここにもデ・マージの静かな曲が微かに流れて来る。これを観たからにはG.ヒルマンに惚れるしかありません。僕が思うことはG.ヒルマンのサルタナをもう2,3作品撮って欲しかったな~と言うことです。
 他にも...しつこい!
 大好きな俳優さんだから作品一つ一つへの思いは絶えません。

 1980年代以降も活動は精力的に続き、テレビ作品もチラリホラリと見受けられます。
 しかし、日本国内での映像媒体は以前にも増して少なくなり、僕らはその元気な姿を見る機会が難しくなってまいりました。
 

 ■ ジョージ・ヒルトン in Macaroni Westerns ■

 Tempo Di Massacro 真昼の用心棒 1966
 I Due Figli Di Ringo リンゴの2人の息子 1966
 Il Tempo Degli Avvoltoi 拳銃無宿のバラード 1967
 Un Poker Di Pistole 拳銃無頼 1967
 Vado...I'ammazzo E Torno 黄金の三悪人 1968
 La Piu Grande Rapina Del West 荒野の金貨 1967
 Professionisti Per Un Massacro 黄金無頼 1967
 Ognuno Per Se それぞれは自分のために 1968
 Il Momento Di Uccidere - 1968
 T'ammazzo!...Raccomandati A Dio 殺す! 神に身をゆだねよ 1968
 Uno Di Piu All'inferno 地獄へ逆戻り 1968
 Kitosch, l'uomo Che Veniva Dal Nord 北から来た男キトッシュ 1969
 Quei Disperati Che Puzzano Di Sudore E Di Morte
                       この盗賊どもからは、埃と死の匂いが立ちのぼる 1969
 C'e Sartana...Vendi La Pistola E Comprati La Bara
                       サルタナがやって来た...貴様の拳銃と棺桶を交換だ 1970
 Testa T'ammazzo, Croce...Sei Morto...Mi Chiamano Alleluja 荒野の無頼漢 1971
 Il West Ti Fa Stretto, Amico...E Arrivato Alleluja 続・荒野の無頼漢 1972
 Fuori Uno Sotto Un Altro Arriva Il Passatore - 1973
 Lo Chiamavano Tresette...Giocava Sempre Col Morto トレセッタと呼ばれた男 1973
 Di Tresette Ce N'e Uno, Tutti Gli Altri Son Nessuno すべてをまき上げる野郎トレセッタ 1974
 Prima Ti Suono E Poi Ti Sparo まずは音楽を奏でてやろう、次には銃声を聞かせてやる 1975
 El Macho マッチョ 1977


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 ▲ Tempo Di Massacro

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 ▲ I Due Figli Di Ringo

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 ▲ Professionisti Per Un Massacro

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 ▲ Ognuno Per Se
 
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 ▲ Il Momento Di Uccidere

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 ▲ Quei Disperati Che Puzzano Di Sudore E Di Morte

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 ▲ C'e Sartana...Vendi La Pistola E Comprati La Bara

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 ▲ Testa T'ammazzo, Croce...Sei Morto...Mi Chiamano Alleluja

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 ▲ Lo Chiamavano Tresette...Giocava Sempre Col Morto

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 ▲ Prima Ti Suono E Poi Ti Sparo


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